ChatGPTの導入を検討する企業や官公庁が増えると思われます。または、導入検討までではないが、業務や事業における有効活用について模索したり、情報収集を行うことがあると思います。ここではChatGPTの導入で考えられる効果とリスクについて述べます(対象:ChatGPTの導入を検討している企業や官公庁の業務担当者)
ChatGPT導入により想定される効果や期待できる業務・サービス
ChatGPTの導入により、以下のような効果が期待できます。
- 業務・サービスの効率化:ChatGPTを活用することで、サービスの効率化が期待できます。例えばコールセンターサービスについて、従来の対応マニュアルとChatGPTを組み合わせることにより、顧客の問い合わせに対する自動応答を効率的に行うことができます。これにより、顧客対応の迅速化、人材不足の解決など、業務の効率化が期待できます。
- ビジネス文書の作成支援:申請書類や企画書などのビジネス文書の作成において、ChatGPTを活用することで、業務効率化が図られます。例えば、自動で文章を生成したり提案をする機能を使うことで、一定のフォーマットに従った文書の作成をスムーズに行うことができます。
- マーケティング支援:ChatGPTを活用することで、顧客への提案や新製品のアイデア出しに利用することができます。例えば、ディレクターの質問にChatGPTはいくつかのアイデアを出したり、事例を提示したりします。こうしたリサーチを通じて顧客のニーズを的確に把握することが可能です。
ChatGPT導入で考えられるリスク
ChatGPTは効果的で魅力のある新しいツールですが、導入には以下のようなリスクが考えられます。これらは一件大量にある課題にみえますが、新しいサービスやイノベーションが起こる時には同様に発生する課題でもあります。
- 信頼性のリスク:ChatGPTは大量のデータを学習しますが、出力される情報の正確性や信頼性に関して保証はしていません、時には誤った計算や史実を生成します。導入企業や利用者がChatGPTによって誤った情報を受け取り、それを基に業務判断やサービス提供を誤る可能性があります。
- セキュリティのリスク: ChatGPTに機密情報や個人情報を送信して生成や要約をさせた場合、その情報についての保証はされていません。ASP経由のセキュリティが整ったサービスであっても、利用者からプライバシーに係る情報を送信してしまった場合、現状100%の保証はできないと思います。
- 法的・倫理的なリスク: ChatGPTが生成した情報が意図せず法律や倫理に違反してしまう可能性があり、導入企業が法的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。特に、事実と違う出力や著作権の侵害、名誉毀損などについて十分に注意する必要があります。
- コミュニケーションのリスク: ChatGPTは人間が曖昧な指示を出した場合、そのニュアンスや感情を完全に理解できない場合があります。柔軟な対応をする一方で、誤解や不適切な対応が生じる可能性もあり、これにより顧客満足度の低下や信頼性の低下が懸念されます。
- 業務変革のリスク: ChatGPTの導入により、従来の業務が自動化されることにより、一部の業務や人員が削減される可能性があります。作業従事者の反発や職場環境に変化が生じる可能性があります。また従来のシステムやツールが陳腐化し見直しを迫られる可能性もあります。
ChatGPTの導入検討:ケーススタディ
ChatGPTの導入検討を行うケーススタディとして、検討理由と導入した場合の効果、考えられるリスクを挙げてみます。いずれのケースも、ChatGPTの導入には一定の効果が期待できる一方で、不正確な情報や誤った回答の生成、情報漏洩やプライバシーの問題、人間のスキルや業務変革への影響等のリスクを生むことを考慮する必要があります。
A社の場合(サービス業)
- 検討理由と目的
- ChatGPTを経由したAIコールセンターサービスを検討している
- 顧客からの問い合わせやサポート対応を効率化し業務効率を向上させたい。
- ChatGPTを活用することで、顧客対応の自動化や問題解決の高速化を実現したい。
- 導入した場合の効果
- 顧客対応の迅速化や効率化により、顧客満足度の向上が期待できる。
- コールセンターの負荷が減り、コスト削減が見込まれる。
- 人員の新しい業務の生成が検討できる
- 考えられるリスク:
- ChatGPTの回答に偏りがある場合、不正確な情報でサポートする可能性がある。
- 顧客の情報漏洩やプライバシーの問題が発生するリスクがある。
- 業務改革により人員削減の可能性がある。
B社の場合(製造・制作企業)
- 検討理由と目的
- 社内における申請書類や企画書等、ビジネス文書作成の効率化を行いたい
- 社内における編集業務の自動化を実現し、業務の効率化を目指したい。
- 社内の文書に一定の品質を保たせたい
- 導入した場合の効果:
- 自動化により社内の生産性が向上し、業務の迅速化や効率化が期待できる。
- 社内のビジネス文書に一貫性と品質向上が期待できる。
- 社内の生産性が向上し、創造的な仕事を生むことができる
- 考えられるリスク:
- ChatGPTの生成する文書が不正確であったり、適切でない情報が含まれる可能性がある。
- 個人情報や業務上の社外秘情報をChatGPTに送信させる可能性がある。
- 担当チームの業務見直しが必要になり、変革への抵抗があるかもしれない。
C社の場合(広告代理店・マーケティング業)
- 検討理由
- 顧客への提案に利用したい
- 企画書の制作に利用したい
- クリエイティブなアイデアを生み出したい
- 導入した場合の効果:
- 顧客への提案における情報の整理や解決策、新しい視点、アイデアを提供できる。
- 情報処理とアイデアを短時間で生成し、スピーディーな企画マーケティング業務が可能になる。
- 業務の効率化により複数の案件を同時に対応可能になる
- 考えられるリスク:
- ChatGPTが生成する提案が正確でない、また人間がファクトチェックを行わないことにより的外れな提案になる可能性がある。
- 提案が顧客ニーズや最新市場に合致しない場合があり、低評価の提案になる可能性がある。
- ChatGPTの生成するアイデアが一律で他社と類似してしまい、独自性が失われ競争力が低下する可能性がある。
まとめ・見解
新たな技術やサービスの導入・活用には多くの潜在的なリスクや課題が存在することがわかります。これは今も昔も変わりません。
主な検討課題は、データの品質や適合性、セキュリティとプライバシー、法的な規制、人間との共存・業務改革、利用マナーやガイドラインなどになります。実際にChatGPT実装のソフトやASP等のサービスを導入する場合は、費用対効果の検証も必要になります。
今後、ChatGPTの活用シーンやAIを取り巻く社会的な変化はさらに大きくなり、新たな課題やリスクが発生する可能性もありますので、常に最新の情報やガイドラインに目を向け、適切な対策を講じることが求められます。
何より導入側がAIを通じて顧客に貢献し社会的に責任ある活用を目指すことが重要です。